タルボ・ロー干渉計と透過型の回折格子
X線タルボ干渉計,タルボ・ロー干渉計では,透過型の回折格子を複数枚使用してモアレ縞の変化を記録・処理します。これにより,通常のレントゲン写真で用いられるX線吸収像に加え,低吸収物質に対して高感度な位相コントラスを用いた微分位相像,モアレ縞の不鮮明化を利用した小角散乱像(暗視野像)が取得でき,これまで可視化できなかったサンプルの状態を観察することができます。
このようにX線タルボ干渉計,タルボ・ロー干渉計では,高コントラストの振幅型回折格子が不可欠です。 当ページでは,これまでに様々なお客様の御要望に応える形で開発された,タルボ・ロー干渉計向けの回折格子の事例を紹介いたします。
X線回折格子
Microworks GmbHは,X線タルボ・ロー干渉計で使用される高アスペクト比,高精度の回折格子を開発し提供しています。
高アスペクト比の吸収格子 |
湾曲型の吸収格子 |
回折格子構造例
X線回折格子は,X線マスクをレジスト上に転写して,構造化したレジストの隙間に電鋳を施すことで製造します。御希望の周期を持つマスクの作製と,既存のマスクレイアウトからの格子製造の,双方を提案可能です。
格子の種類 | 吸収格子 | 位相格子 |
---|---|---|
金属構造体の厚み例 | 250 μm | 4 μm |
周期 (metal + space)の例 | 4.8 μm | 3.57 μm |
材質 | Au | Ni |
標準品の仕様
特別な開発を必要としない仕様の例
構造体材質 | Au, Niまたはポリマーレジスト |
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基板 |
標準: Siウェハ (標準: 200 μmあるいは550 μm) オプション: グラファイトやポリイミド等の低吸収体 |
構造面積 |
標準: 直径70 mm オプション: 直径100-140 mm, つなぎ合わせによる面積の拡張も応相談 |
開発品1: 大面積のX線回折格子
Microworksは,肺や胸部の大視野X線暗視野撮像向けに,大面積の吸収格子を製造しています。
Microworks製造の大面積X線回折格子。肺のX線暗視撮像の開発と臨床試験に利用される胸部サイズ。従来の胸部X線に匹敵する放射線量でCOVID-19を含む肺病変のX線診断を大幅に改善することが見込まれる。
格子窓のサイズは350 mm x 30 mm (上),400 mm x 30 mm (下)で,いずれも3枚の回折格子をタイル状に配列したもの。
大面積の回折格子: 仕様例
格子の種類 | 単品の大面積回折格子 | タイル状に複数配列した回折格子 |
---|---|---|
回折格子部分の面積 | 200 mm x 100 mm | 400 mm x 30 mm等 |
回折格子周期 | 7.0-10.0 μm | 応相談 |
吸収体の高さ(金) | 最大200-250 μm程度 | 最大200-250 μm程度 |
基板材質 | Si | Si |
開発品2: 狭い周期の回折格子
非常に狭い周期の回折格子の実用化を目指しています。1.0~2.0 μm の周期が,限られた面積内で実現しています。
線幅0.5 µmの回折格子例 |
リング形 線幅約1.0 µmの回折格子 |
格子の種類 | 位相格子 18 keV,π/2 |
位相格子 26 keV,π/2 |
吸収格子 |
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周期 | 2.0 μm | 1.0 μm | 1.4 μm |
材質 | Ni | Au | Au |
構造高さ | 3.2 μm | Up to 5 μm | > 20 μm |
格子構造面積 | 10 mm x 10 mm | 5 mm x 5 mm | 20 mm x 20 mm |
基板材質 | ポリイミド | Si 200 μm | ポリイミド他 |
構造デザイン | 連続線 | ブリッジ | ブリッジ |
製造者と実績
カールスルーエ技術研究所(KIT)・IMTのスピンオフ企業であるMicroworks GmbHは,X線リソグラフィを用いた高アスペクト比の樹脂構造と電鋳構造の研究開発の第一人者です。お客様のお求めにより,御希望の撮像環境に対応した回折格子を製造,提案しております。X線回折格子の使用実績については,Publication list を御覧ください。
[KIT/IMT and Microworks GmbH]