Organ-on-a-chip / MPSとは
Organ-on-a-chip / MPS (Microphysiological systems)は,マイクロ流体チップ内の培養空間にヒトの組織を複数配置してミニチュア化したin vitro ヒト型試験系で,灌流環境下で細胞を培養します。複数臓器の培養ユニットを連結して培養することで人体における臓器間の相互作用をin vitroの培養器に再現することを試みるもので[1],近年盛んに研究発表されています。
Organ-on-a-chip / MPSの利点
1. 細胞培養環境のサイズ・形状を in vivo の状態に近似化可能
2. 表面改質により培養チャンバ内の環境を in vivo 状態に容易に調整可能
3. 流れのある動的環境であり,in vivo 環境に似た機械的刺激を細胞に対して与えられる
4. 1枚のチップ上で複数のデータを取得可能[2]
[1] 石田 誠一,金森 敏幸,日薬理誌 (Folia Pharmacol. Jpn.) 154, 345-351 (2019)
[2] Holger Becker, 創薬のひろば 2018年秋号 Vol. 9
microfluidic ChipShopでは,さまざまなコンセプトのorgan-on-a-chipチップを実現しています。
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クロスフローメンブレンチップ
クロスフローメンブレンチップとは
メンブレン(多孔質膜)を持つorgan-on-a-chipデバイスです。上部のチャンバと下部のチャンバそれぞれに培地用の溶液を流す流路があり,同時に灌流が可能です。上下のチャンバ間に細胞培養基質の役割を果たすメンブレン(多孔質膜)が搭載されており,細胞を播種し薬剤を透過させることができます。
本製品はカタログ掲載品です。また,複数のデザインバリエーションとカスタマイズオプションがあります。
クロスフローメンブレンチップ[480] |
クロスフローメンブレンチップの構造 |
期待できること
・層流状態で,制御されたシアストレス下での細胞培養
・灌流中の物質濃度の動的な調整
・栄養培地の効率的な供給
・浮遊細胞のオーバーフローと接着細胞との相互作用や,これらの同時実施
・異化細胞代謝産物の放出
実績例
・内皮細胞[1]や肝洞様毛細血管[2]の作成
・Lung-on-a-chip (human alveolus-on-a-chip) [3]
オプション例
・チップ上に搭載しているメンブレン(多孔質膜)の指定・変更
・リアルタイム酸素センサーをチップ上に付加 [4]
・チャンバや流路の親水化
・DNase / RNaseフリーの処理
出典
[1] M. Raasch et al., Microfluidically supported biochip design for culture of endothelial cell layers with improved perfusion conditions, Biofabrication 7(1), 015013, 2015
[2] Rennert, K. et al., A microfluidically perfused three dimensional human liver model, Biomaterials 71, 119-131, 2015
[3] S Deinhardt-Emme et al., Co-infection with Staphylococcus aureus after primary influenza virus infection leads to damage of the endothelium in a human alveolus-on-a-chip model, Biofabrication 12 025012, 2020
[4] B. Ungerböck, V. Charwat, P. Ertl, T. Mayr, Microfluidic oxygen imaging using integrated optical sensor layers and a color camera, Lab Chip. 13(8), 1593-1601, 2013
相互作用チャンバチップ
相互作用チャンバチップとは
投与された毒素及び薬物を代謝し,その結果生じた代謝産物の毒性読み取りができる,2チャンバデザインのマイクロ流体チップです。[5]
本製品はカタログ掲載品です。また,複数のデザインバリエーションとカスタマイズオプションがあります。
相互作用チャンバチップ[688],[737] |
相互作用チャンバチップ |
使用例
肝臓・腎臓モデルの組み合わせは,肝臓に媒介された毒性効果の初期判定に適しています。肝細胞を薬物で暴露した後,代謝産物は細胞培地に乗せられて,腎細胞があるもう一方のチャンバに輸送されます。
結果
従来の静置細胞培養で検出できない毒性効果と,流れの方向に依存した毒性効果を特定して,共薬物処理によって毒性を誘発し抑制することができました。[6]
COPチップにおけるRTPEC(ヒト腎臓近位尿細管上皮細胞)の細胞培養(6日後) |
COPチップにおけるhC3A(肝細胞)の細胞培養(6日後) |
オプション例
・チャンバ内の表面改質(親水化)
・チャンバ内のコーティング
・DNase / RNaseフリーの処理
出典
[5] Holger Becker et al. "Microfluidic devices for stem-cell cultivation, differentiation and toxicity testing," Proc. SPIE 10061 (2017), Microfluidics, BioMEMS, and Medical Microsystems XV, DOI: 10.1117/12.2254026
[6] Theobald, J. et al., Liver-Kidney-on-Chip To Study Toxicity of Drug Metabolites, ACS Biomater. Sci. Eng., DOI: 10.1021/acsbiomaterials.7b00417, 2017
相互作用流路チップ
相互作用流路チップとは
相互作用流路チップは,3つの隣接する流路で共培養された細胞を研究するために開発されました。培養コンパートメントで培養された細胞の,細胞間相互作用を観察できます。3つの流路は,透過性のピラーバリアによって分割されています。
相互作用流路チップ[983] |
相互作用流路チップ[983] |
アプリケーション
共培養と遊走細胞アッセイを,潜在的なアプリケーションとして想定しています。
・例: 灌流モードで2つの外側流路を使用
・例: 静的3D培養条件で,細胞を含むゼラチン状の細胞外マトリックスで内側流路を充填して使用
相互作用流路チップ詳細資料
Organ-on-a-chip 送液システムを用いた灌流培養セットアップ
Organ-on-a-chip内で培養中の細胞にシアストレスや機械的な刺激,濃度勾配等を与えるため,流量を精密に制御できる送液システムを使用することをおすすめいたします。
下の図では,microfluidic ChipShopのクロスフローメンブレンチップ[480]に対して,Fluigentの圧力制御式送液システムFlow EZを用いて2種類の試薬を送液し,それらの流量を制御する場合のセットアップを紹介しています。構成アイテムの詳細はこちらのページに掲載しています。
Organ-on-a-chipセットアップ例 |
Fluigentの送液システムFlow EZ |
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